楽しかったけど、封印したい「舞妓体験」の思い出
まだ「舞妓体験」というものが世間一般に知られていなかった頃のお話なので、ずいぶんと前の体験にはなります。
当時、私は20代半ばで、同じ職場の女子力の高い40代の主婦の方に誘われて、京都で「舞妓体験」をすることになりました。
正直あまり乗り気ではなかったのですが、舞妓さん独特の化粧を施し、かつらをつけ、綺麗な着物を着ると、さすがにテンションがあがります。
舞妓さん特有の履物である「おこぼ」は、最初は、歩きにくくてまいりましたが、手を引いてもらって歩くうちに、少しずつ慣れてきて、すっかりその気になってきました。
冷静になって写真をみてみると、しもぶくれ顔に真っ白な化粧を施して、赤いおちょぼ口状態の私はお世辞にも可愛いとは言えませんし、40代の主婦の方も「舞妓」の装いには明らかに無理があったのですが、当時は、気分が高揚して冷静に自分たちをみることができない状態でした。
しかも、タクシーの運転手さんが、観光名所まで連れて行ってくれて、その場で、写真を撮ってくれるというサービスがついており、まさに女優気分です。
その上、観光客のほとんどが本物の舞子さんだと勘違いしてくれるので、キャーキャー騒がれたり、一緒に写真をとってくれと頼まれたり、外人さんに握手を求められたりもしました。今なら、おこがましくてとてもできませんが、その時は調子に乗って、写真や握手に応じていましたので、当時私たちを舞妓さんだと信じて、喜んでくれた方々には、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
最近の「舞妓体験」について調べてみると、当時の私たちのようなケースの反省点を生かしてでしょうか、「写真修正ができるもの」「地毛を生かして、かつらを本物らしくみせるもの」「化粧に工夫を施すもの」などいろいろなサービスが追加されているようです。
今なら、私の写真も、もう少しなんとかなったかもしれません。
ただ、外人さんにだけは、評判がよく、ホームステイの際に、写真を見せると一様に興味を示してくれました。
楽しかったけれども、封印したくもある、まさに若気の至りともいえる思い出です。